認知症の理解を深め、共に生きる社会へ
専門相談員
日本における高齢者人口は約3,625万人で、人口の約30%にあたります。
高齢者の人口増加に伴い認知症患者も増えていくと予想されます。
もし認知症になったら、家族がなったら・・・、そんな心配をされる方も多いのではないでしょうか?
早くから認知症の理解を深めて、もしもの時に備えたいものです。
認知症の相談窓口として活動されている『熊本県認知症コールセンター』の藤井美千代さんにお話を聞きました。
認知症には種類がある。早期発見は大切
私たちは公益社団法人「認知症の人と家族の会熊本県支部」として活動していて、県市から委託を受けて熊本県認知症コールセンターの業務も行っています。
認知症とは、様々な脳の病気によって脳の神経細胞の働きが徐々に低下して、認知機能が衰え社会生活に支障をきたした状態をいいます。
認知症には種類があり、一番多いとされるのがアルツハイマー型認知症です。
物忘れ(記憶障害)で始まることが多く、数年から10年以上かけて徐々に進行します。
また脳梗塞や脳出血など血管障害によって認知機能に影響が出た場合「血管性認知症」と診断されます。
他にも脳の前頭葉と側頭葉を中心に脳が徐々に委縮して発症するのが「前頭側頭葉変性症」、他「レビー小体型認知症」、「意味性認知症」「嗜銀顆粒性認知症」などがあり、それぞれ症状などが異なります。
最近は薬などの治療も進んでいて、自分がどの認知症にあたるのかを知る必要があると思います。
専門医にかかってきちんとした診断を受けることをお勧めします。早期発見はとても大切です。
認知症診断名(2022年度介護家族への調査結果より)
できることはチャレンジ!希望を持って暮らす
認知症になると、何もできない、何もわからなくなると思う方がおられます。
これは大きな間違いです。確かに認知症は進行する症状です。
ただ、時間をかけて進行するので急に何もできなくなるのではありません。
認知症になっても様々なチャレンジをしながら社会に参加する人、あるいは仕事を続けている人はたくさんいます。
2024年1月に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行されました。
これは認知症の人の尊厳を守り、希望をもってくらすための法律です。
たとえ認知症になっても、できることはチャレンジして、できないことはさまざまなサポートを受けながら、安心してともに生きる社会を築いていきたいものです。
一人で抱え込まず、気軽に相談を
「認知症コールセンター」では電話相談、来所相談で対応するほか、認知症の方や介護家族の方が集う場を提供しています。
それぞれの状況に合わせ皆さんが集い、顔見知りになり「一人ではなかった」という安心感のある居場所になっています。
また、認知症を正しく理解していただくための研修会や講演の依頼も受けています。
最近ではキッズサポーター講座の活動支援を行う機会がありました。
子どもたちの声を聞きながら「共に生きる地域社会」とイメージしました。
「認知症カフェ」や「介護者のつどい」をご存じでしょうか?認知症の家族を抱えて大変な思いをされている方が、日頃の思いを語り、他の方のお話を聞くことで、共感が得られ笑顔になられます。
このような集いの場が身近な地域にできるといいですね。
親の言動に困惑したり、介護に疲れてしまったり、いろいろと悩んでおられる方へお伝えしたいのは、一人で悩まないこと、抱え込まないこと。
人に話したり、頼ったりすることで心が軽くなるものです。
まずは気軽にコールセンターに相談してみませんか。
介護経験者や専門職が皆さんのお話を聞いて、必要な情報を提供したり、認知症の方の介護について一緒に考えましょう。